7/20 東京国際フォーラムホールA

遅れを取り戻せずに募る焦り。先々週の木曜日のお話。

ももいろクローバーZ有安杏果のソロコン「ココロノセンリツ 〜Feel a heartbeat〜 Vol.1」が東京国際フォーラム・ホールAで行なわれた。国際フォーラムで最大のホールAは5,012席を誇る国内でも屈指の大型ホールであり、名古屋、大阪、東京と3大都市で行なわれた初のソロツアーのファイナル公演に相応しい会場でもある。そんな大きな会場でも余裕でソールドアウトしてしまうところは、まだまだももクロというブランドの神通力なのか、あるいはソロアーティストとしての有安杏果に対する期待感なのか。

定時に会社を出ていそいそと有楽町へと移動。18時半過ぎに会場着。入場列は長かったものの顔認証システムは10台くらい用意されており、10分とかからずに認証&発券完了。物販はほぼ並ばずにパンフレットとツアーTシャツを購入。パンフレットは千円にしては充分過ぎる充実した内容。杏果推しなら必携。お買い得にも程がある。席は1Fの19列目で一番上手側のブロック。数字だけだと余り近いようにも思えないけど、実際に会場に入るとホールそのものが凄く広いので比較的近く感じる。何よりもホール特有の傾斜があるのでステージの見晴らしは良い。そして結果論になるが、丁度真横にあたる上手端の高台が車椅子エリアになっていて、杏果は幾度となくそこまで来てくれることがあったのでその点では他のエリアよりも恵まれていたと言えるかもしれない。

19時3分、BGMが大きくなって自然と手拍子が発生。その曲が終わると暗転。ステージにはバンドセットが組まれているが、まずは杏果が1人で登場して、センターに設置されたキーボードに着座すると、ピアノ弾き語りで“ありがとうのプレゼント”を歌い始めるサプライズ。これは驚いた。ギターとドラムに続いてピアノまで練習していたとは。多少拙い演奏ではあったものの、そんなことを気にする者は誰もいまい。彼女のひたむきさに心打たれると同時に、彼女の音楽に対する並々ならぬ愛情を感じずにはいられない。また、1年前に行なわれた初めてのソロコンで最後に歌われた曲から始まる構成も粋である。曲のクライマックス「私からあなたへと届けたいんだ、未来変えるたくさんのありがとう」いう個所では、感謝の祈りを捧げるように両手を組んで力強く声を伸ばすアレンジ。そのロングトーンがズバズバと心に突き刺さる。有安杏果はアイドルと言う枠を超えて本当に魅力的な歌手だと感じる。

そんな余韻に打たれた観衆に笑顔を振りまいて手拍子を促す杏果。堂々たるアクト。“ハムスター”に続く“feel a heartbeat”ではエレキギターを演奏。3曲を終えて最初のブレイク。ショートカットにしたのはソロコンツアーに向けた覚悟の表れだったことを告白。1人で全てを背負う責任感だったのだろうか。ソロコンだとトークが終始関西弁なのも微笑ましい。ピアノの練習は「ハノン」という青い教則本Amazonで買うところから始まった、なんて語りもどこか杏果らしい。スクリーンに映された写真ウォールを眺めながら「四つ葉のクローバーを見つけたことがない。いつも蚊に刺されて帰ってくる」なんてトークもまったり。そして会場全体で乾杯。「ももかんぱい!」なんて会場の声を拾って「巧いこと言ったな」と指摘したりと終始アットホームな雰囲気。

風味堂提供の新曲“遠吠え”はジャジーでアダルトなタイプ。“愛されたくて”と同じ作者と知って納得。村石さんのドラムソロから杏果のドラムセットが用意されて、“教育”は杏果がドラムを叩きながら歌う。村石師匠は後ろでタンバリンを叩きながら温かく見守っている(笑)。演奏そのものではなく演出面だが、映像が若干遅れていて音とずれていたのが気持ち悪かった。もっと後ろの席だと丁度よかったのだろう。大会場故の難しさか。タオル振り回し曲の“Drive Drive”では両ウイングまで元気に駆け回る。この振り幅も魅力。これまでのソロコンを思い返して作ったという新曲“ヒカリの声”に続いて、しっとりバラード風な“色えんぴつ”も新曲。実はこの頃、20時から某チケットの先行先着が行なわれていて、ライブ中にも拘らずスマホを手にワンチャン狙うも見事な空振り。速攻繋がってアウトだったらもう仕方ない。すぐに気持ちを切り替えて元に戻す。“色えんぴつ”はアニメーションも素晴らしかった。音符が集まってハートになる場面は特に杏果の心境と共鳴している気がして心に響いた。

再びブレイク。未だに「誰からも必要とされていないんじゃないかというネガティブな気持ち」を率直に吐露してしまう正直さは「こうして応援してくれるみんながいるから自分にも何か出来ることがあるんじゃないかと思える」というポジティブな気持ちと対になっているわけだが、そうした有安杏果のダークサイドが今の音楽活動に投影されているのは明白で、それをポジティブな光に変えて見せるところが彼女の魅力なのだろう。“裸”から続く“小さな勇気”では「らっらーら」と合唱。深々と一礼する杏果。ここで10/13の仙台サンプラザホール公演決定を発表。げ、BiSHとエビ中の対バンが被ってるがな(苦笑)。「皆さんに届けたいものがあるので、このまま待っててな!」とギターのハードケースを持ってきて、アコギの弾き語りで“ペダル”を披露。いかにも高そうなアコギは誕生日に買いに行ったそうで曰く「人生最大の買い物」とのこと。ウン十万したのだろう(笑)。ここで大学の卒業写真をスクリーンに映しながら、10/20の日本武道館公演決定を発表。おおっ、これは何としても行きたいな。BiSHが被らないことを願うばかり(苦笑)。その後はファ\xA5

鵑鯊腓い棒絜辰董\xA2Official髭男dism提供の新曲“TRAVEL FANTASISTA”から3曲で本編終了。21時2分。

アンコールはアップテンポな“Another story”から。この曲は気持ちよく高まるアゲ曲。そして“愛されたくて”から本編のセトリを逆に追っていくメドレーが繰り出される。これも斬新で意欲的な試みだ。“小さな勇気”を地声アカペラで歌って広い会場を痺れさせた場面や、“教育”はドラムを叩かない代わりにキレッキレのダンスを披露して喝采を集めた場面など、ただハイライトとして再現するのに留まらず、本編とはまた違った魅力を散りばめた演出が素晴らしかった。「楽しすぎるからもう一回ピアノを持ってきてもらいたいほど。楽しい時間を過ごせて有難う!」と笑顔の杏果。バンドメンバー前に出てきてカーテンコールからバンドメンバーが退場。ここで改めて「いつも笑顔で見守ってくれてて有難う」とファンへの感謝の言葉を紡ぐ。「音楽だけは裏切らない」という言葉が突き刺さる。1stソロアルバムの発表に沸く場内。感極まった杏果は思いが溢れて涙が溢れる。ピアノ演奏のみで“心の旋律”を歌い終えると深々と礼をして、幕に消える前に再び礼をして去っていった。

ダブルアンコールを求める手拍子が鳴りやまず「みんなに会いたくて、何も考えずに飛び出してきちゃった」と再びステージに戻ってきた杏果は「みんな歌える?」と訊ねて「やれるか分からへんけど」と再びアコギを持ってきて「最後にみんなで音を作ろう。きっとみんなの歌があれば大丈夫」と“feel a heartbeat”をリプライズ。たった1人で五千人を相手に音と歌を届けている姿を見ていたらさすがに感動も極まる。最後はやっぱりファンに対する感謝の言葉を地声で届ける。「これからも心の音をみんなに届けられるようにまた明日から頑張るから。あ、みんなは頑張り過ぎす、程よくでいいから」なんて言葉に笑いが起きる。どこまでも杏果らしい。エンディングのスライドが映し出されて終演は22時4分。思ったよりも長丁場だったな。

有安杏果

ありがとうのプレゼント / ハムスター / feel a heartbeat / 遠吠え / 教育 / Drive Drive / ヒカリの声 / 色えんぴつ / 裸 / 小さな勇気 / ペダル / TRAVEL FANTASISTA / Catch Up / 愛されたくて

encore1 Another story / セットリスト逆メドレー / 心の旋律

encore2 feel a heartbeat

ももクロ曲もカヴァー曲もないソロ曲のみによる構成に並々ならぬ決意を感じさせた。また、衣装チェンジもなく、バックのスクリーン以外には特に派手な演出もなく、ややシンプルなステージではあったが、だからこそ彼女の歌と演奏が伝わってきた気もする。ももクロ有安杏果を期待していたら期待外れだったのかもしれないけれど、ソロシンガーとしての有安杏果としては百点満点の素晴らしいソロコンサートだった。やはり有安杏果に間違いはなかった。